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従業員満足度アンケートについて考えてみる②

 前回は、従業員満足度が何を測るためのものか、という点を議論しました。大きくは、働く人のモチベーションという切り口で、組織を診断するためです。

 

 ワンショットの調査で何が分かるのか

 予算や時間の制約があるため、現実にはなかなか難しい話かもしれませんが、調査をするときには、大きな手間をかけて包括的な調査を一度だけ行うよりも、都度仮説を立てつつ、数回調査をした方が良いのではないかと思っています。

 

 また、組織や従業員の情報を、すべて調査票で得ようとするのも良い手法とは思えません。アンケートのほかにも、様々な調査を組み合わせることで、一つの観点からは見えなかった問題や解決策が見えてくるかもしれないからです。

 

 そこで、私がESアンケートを設計するなら、という前提でいくつかの原則を考えてみたいと思います。

 

【第一の原則】仮説・質問内容を絞り込む

 

 調査をするときには、どうしてもアレも聞きたい、コレも聞きたい、と質問票を豪華にしようとします。意味のあまりない(もしくは、まったくない)質問項目を増やせば増やすほど、回答者への負担が増え、集計や分析の工程が増え、調査の目的は曖昧になります。何が知りたいのか、ということを刈り込んだ上で、少ない質問内容で解明するべきポイントを絞った方がむしろ情報は豊かになるのではないかと私は考えています。

 

【第二の原則】少ない質問内容(変数)について、相互関係や意味をはっきりさせておく

 

 前段階で、質問票の前提となっている理論(経営の理論である場合や、因果関係に対する経験的な洞察)についてよく理解しておくことが重要です。アンケート調査を行うことで、何が分かるのか、何を知りたいのか、ということをはっきりさせます。こうすることで、質問の数を絞り込む判断もしやすくなります。

 

【第三の原則】分析結果を、どう活用するか、ということをはっきりさせておく

 

 何が分かるのか、ということをはっきりさせた上で、ある程度分析手法に見通しを付けておくことで、結果の活用法が見えます。追加的に調査を行う場合や、施策に反映する場合にも見通しが得られやすくなります。さて、ここまでがどちらかというと、リサーチデザインちっくな原則です。

 

 では、より実践的な原則をいくつか紹介しましょう。

 

【第四の原則】曖昧な質問を作らない

 

 角が立つ、などと変な理由でアンケートの文面が和らぐことがあります。ですが、曖昧な質問ほど、無駄なものはありません。ごにょごにょと聞くよりも、

「会社のことが好きですか?」

 と聞いた方が、よほどストレートで、いい情報が得られそうではありませんか。端的で、直接的な質問に、はい、いいえ、で答える以上に、欲しい情報が得られる手段はないように思われます。他の質問とも関連付けやすいです。

 

【第五の原則】フリーアンサーを設けない

 

 これも最初の段階で、質問内容と仮説を絞り込むことによって、できる処理です。大規模なアンケートを行ったときに、フリーアンサー項目が十分に分析されないまま、やっただけで終わるということは珍しくありません。それなら、やらない方がマシです。

 

質問項目の多さと調査結果の豊かさはほとんど関係ない

 さて、この方針に従って、作成される質問票は欲しい情報を最短距離で入手するための、いわば「切り詰められた」設問表です。しかし、事前に仮説の設定や洞察が豊かであれば、得られる情報量は大きなものになります。ぼやっとたくさんの質問をするよりも明らかに多くの有益な情報を生み出すことができます。ぼやっとたくさん質問をして、良く分からない調査結果を出すのは、非常に頭の悪いリサーチャーのやることです。

 

 そして、回答に要する手間、集計・分析に要する手間を大きく省くことができます。つまり、工数=コストを削減できるということです。一見、豊富な質問をしているかのように見える質問票が、実はノイズ=ゴミ情報を収集するだけの物になり果てている、ということが往々にしてあります。私は、大金をかけてゴミコレクターになる必要はない、と思います。