B☆らぼ

知っている、から、理解できた、へ。理解できた、から、できる、へ。ビジネス知識からパフォーマンスへの橋渡し

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経営理念、とか、行動方針を策定するための手順を考えてみる

一方的な理念は要らない

 はい、今回はヴィジョンに基づいた経営のような考え方を洗い直してみます。こういう議論をするときに、トップダウンであるべきか、ボトムアップであるべきか、というような問いがあります。

 

 はっきり言って、無意だと思います。究極的にはトップダウンであろうがボトムダウンであろうが有効であればよく、有効でないなら、現場の想いが詰まっていようがトップの想いが詰まっていようが無意味です。一方的な愛は相手にとって迷惑ですが、人間関係同様に、会社においても同じです

 

 

 経営理念の意味

 

 そもそも経営理念や行動方針のようなことばは何のために必要かという話から始めましょう。そもそも意味なんてあるのか、というつっこみは聞かないこととして、要は、会社で仕事をする上で、経営者から従業員まで「これは大切にしようよ」という部分を共有するためです。

 

 その目的からすると、いくら経営者に思い入れがあることばだろうが、

l  従業員が大切だと思っていない

l  現実に守られていない

l  特殊な言語で書かれていて、新しく会社に入ってきた人が共感しづらい

 といった点で有効性チェックをするべきですし、チェックの結果ダメなら変えるべきです。

 

経営理念のテスト

 つまり、トップダウンで決めようが、ボトムアップで決めようが、ダメなのものはダメなので、テストすることの方が重要。

 

 ただし、頻繁に変えると、企業の方向性がブレブレで、それもそれで困ります。ということは、まず練り込む部分は、

 

手順①「企業にとって、何が大切なことなのか」

  

 ということを固めることです。これは、ワーディングの問題というよりは、できるだけことばを尽くして、何が重要かということをはっきりさせる努力が必要です。カッコいいことばを使おうと考えるのではなく、きっちりとした散文で、できるだけ一般的で飾り気のないことばで表現しようと試みるのが無難です。これは、企業の側からの想いなので、経営者と企画スタッフレベルで決めてしまうのが早いでしょう。

 

手順②「手順①をテストする」

 

 もっとも単純なレベルのテストは、「うちは○○がしたい、それには社会的意義がある」という考え方が「古臭い」「意味がない」「消費者や潜在顧客はそんなこと価値があるとは思っていない」と切り返されるかどうかということです。

 社内で聞いても仕方がない部分もあるかもしれませんので、それこそ市場調査のようなことをやってみてもよいかもしれません。

 

手順③「手順②を経営理念、行動方針といった具体的なレベルに落とし込む」

 

 ここで、ようやく、実際のワーディングになります。ここでも、社内でも経営者にしか通用しないことば、会社に長くいる人間にしか分からないことば、特定の宗教に毒されているような考え方、を振りまくと、共感を得にくくなります。まあ、会社をカルトのように組織したいという思いがあるのなら、そうした奇妙なことばづかいをすることも戦術の一つとしてありかもしれませんが、行きつく先はブラック企業でしょう。

 経営者が意気揚々と自社の経営理念を公開した時に、実は世間の人たちはドン引きしている、ということは少なくないと思います。しかし、そういうネガティブな声は当事者には届きにくいため、裸の王様の様相を呈することもあるでしょう。

 

手順④「手順③のワーディングがうまくいっているかどうかをテストする」

 

 一般的な感覚で、経営理念や行動方針ということばを見てもらうのが、一番良いと思われます。できれば「この時代を切り開くイノヴェーションってなんのことなの? あんたのところの会社、そんなかっこいいことやってるの?」といった冷静な意見を大切にしたいところです。

  

 ヴィジョン、経営理念、行動方針といったところは、企業あるいは経営者の自分語りの場として認識されています。それは間違いではないでしょう。しかし、青少年が中学生の時に痛々しいポエムをノートの裏に書くのと同じで、良くできた自分語りは他人の共感を呼ぶかもしれませんが、自己陶酔の産物のポエムは、どれだけ思いがこもっていようがひたすら痛いだけです