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コンサルタントの現状分析とか業界用語

コンサル村の気持ち悪い方言

 コンサルタントの人と仕事をしていると、「どんなファクトファインディングがあったのか?」とか「その資料にはどんなバリューがあるんだ?」などと、冷静に考えると、頭が空っぽそうな表現を良く使います。業界内の隠語のようなものです。

 

 彼らがそのあまり品のよろしくないカタカナ語で表現していることを、少し冷静な形で書き直してみたいと思います。

 

 事実と解釈

 事実、という概念はかなり注意して用いるべきものだと思いますので、少し遠回りをしながら、見ていきましょう。

 

 まず、コンサルタントの前にはクライアントの活動が広がっています。これが分析対象です。この対象の全貌を把握することは社内の人間でも難しいでしょうし、外から来た人間には非常に難しいことです。というか無理です。

 

◆ファクト(ドヤっ

 そこで、多くの場合、社内の会議の資料や財務データやその他もろもろの資料を預かり、情報をまとめていきます。この資料の集大成をファクトブックなどと表現することもあるようですが、往々にして、大量の資料には数々の矛盾点や実際の業務とそぐわない点があります。そうしたポイントを、インタビューや観察を通して、まとめていきます。当然ながら、ここには、データの解釈をしながら組織全体に対して統一的な解釈を施すという過程が入ってきます。

 

 ですから、ファクト、ファクトと何とかの一つ覚えのように表現されている当の対象は、整合性を高められた解釈の寄せ集めなのです。当然ながら、細々とした詳しい情報を並べられても、そんな資料を読まされる側はたまったものではないわけです。ですから、細々とした話を差し引いて残る、問題の構造を提示します。

 

 丹念に情報を集めれば、良い現状把握ができるわけではない、ということが分かると思います。つまり、問題の構造を抽出する時点で、情報の取捨選択をかなり意識的に行わなければなりません。どういう論拠で、何を採択し、何を捨てるか、そして、その選んだものをどのように描写するか、というのは人によって大きく変わります。もし、これが簡単な作業なら、絵日記を書いている人から世界的なフィールドワーカーまで一律で、優れた現状把握の担い手に慣れるはずです。もちろん、そんなことはありません。

 

◆バリュー(ドヤっ

 バリューということばもよく使われます。バリューを出せ、などと声高に言われると、悩みます。私も、昔は何を言っているのか理解ができなかったので、しんどい思いをしました。しかし、最近、これは、お前頑張れよ、と言っているのとほとんど変わらないのではないかと疑っています。つまり、精神論の域です。

 

 前回のプロセス図から考えてみましょう。仕事として完成度が高いかどうかを考えると、データ収集では良いデータがたくさん集められたか、が判断基準になります。続いて、データの分析、という観点では、収集したデータをどのように加工し、説得力のある形にまとめられるかという点が勝負になります。そして、現状の把握として、仮に顧客に報告書を書くのだとしたら、報告書が十分説得的であるかということが質の良い仕事かどうかを判断する基準になります。

 

 そして、その現状把握の目的は、あるべき姿とのギャップを計測するためのものです。ギャップの高精度な把握は、優れた改善策の提案につながるはずです。

 

 こうした手順を踏まえると、バリューを出せ、などと言わなくても、作業の一つ一つがどの程度の目的に合致しているかということがプロジェクト全体の成否につながるはずです。むしろ、メンバーがバリューを出せないのは受注段階の提案やプロジェクトマネージャーに起因する問題かもしれません。仮に、制約条件があって、当人のせいではないかもしれないけれども、何とかしろよ、という話なら、「がんばれ」と無責任に言っているだけに過ぎなくなります。

 

 プロジェクトの目的についてメンバー間で合意が取れており、その上で、仕事の成果を見極めようとするのであれば、「バリュー、バリュー」と何とかの一つ覚えのように言う必要はありません。「バリューを出せ」と執拗に言ってくるタイプの人は、個人的な経験から言わせていただくと、分析的な物言いができない大雑把なタイプの人だったのではないかと私は考えています。自分で自信を持って正確な物言いをすることができない点を、コンサルタント業界用語で塗布するという下品な人、というわけです。首吊ってこいよ。

 

コンサルタントの業界用語

 偉そうにファクトだのバリューだの言っている人間は大したことがない、という身も蓋もない現実をわかっていただけたでしょうか。コンサルタントの話の中に、こういういかめつい表現が登場するのは、医者が白衣を着て患者の前に立つのと同じようなもので、要するに偽薬の類です。

 

 なんだか威圧されているなあ、と思うなら、「平易な言葉で言い換えてください」「わかりません」とコミュニケーションすることが重要だと最近私は思っています。言葉尻ではなく、実際に何をしているかということに着目することが重要です。