B☆らぼ

知っている、から、理解できた、へ。理解できた、から、できる、へ。ビジネス知識からパフォーマンスへの橋渡し

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コンサルタントと知識(ナレッジ)について

 知識(ナレッジ)という言葉は、ビジネスシーンで濫用されるようになってもう20年以上になるでしょうか。

 コンサルタントと普通の事業会社の従業員の違いが、知識資本にある、と考えている人は少なくないと思いますので、今回はその点をピックアップしてみたいと思います。

 

 

 コンサルティング会社の知識資産は何?

 コンサルティング会社に所属していると、一般の事業会社に所属しているよりも、データベースや資料、それから過去のプロジェクトの成果物などを見る機会に多く恵まれます。コンサルタントには、これを売り文句にしている人がいますが、では、その一般の人に開示されない情報にどれだけの価値があるのか、という点については、私は良く分かりません。

 優れた手法や情報はほとんど公開されている、というのが本当のところじゃないでしょうか。隠れたところに真実がある、というなんだか密教じみた発想は現実味がないと思われます。

 

簡単な思考実験

 ここにA社というクライアントがいます。そこに、コンサルティング会社が入り、プロジェクトにおいて優れた成果を出したとしましょう。プロジェクトでは、素晴らしい手法が用いられました。

 コンサルティング会社とA社の間では秘密保持がなされるかもしれません。しかし、本当に優れた手法ならば、A社は他の仕事でも元の手法を変奏してでも利用するはずです。A社と一緒に仕事をする人たち、A社の仕事を見聞きする人たち、A社を退職する従業員―――その人たち全てが、コンサルティング会社の仕事をベースにして、もっとよい仕事ができないか、と模索するのではないでしょうか。コンサルティング会社の社内にだけ優れたノウハウが残る、などというのは妄想でしょう。

 いや、本当に重要なことはA社には伝えないんだ、という変な前提を付け加えてみましょう。そうすると、秘密は守れるかもしれませんが、そのコンサルティング会社は不誠実な仕事をしていることになりますねえ……。

 

コンサルタントはよく転職する

 コンサルタントを名乗る人で、一回も転職していない、というのはレアです。多くの場合、この業界の人たちは多くの転職を経験します。当然、その度、秘密の情報とやらがあるとしたら、流出します。

 

知識の蓄積はハッタリ

 基本的には、こうした営業文句はハッタリだととらえてよいでしょう。確かに過去の仕事を見れば、仕事の仕方はわかります。調べたい情報があった時に資料室が充実していたり、データベースに容易にアクセスできるのは便利です。情報を武器にする、という点において、多少の優位性があるのは明らかです。

 ですが、所詮は程度問題でしょう。

 

属人的な知識資本(ただし、それを本当に知識と呼ぶべきかどうかは……)

 コンサルタントの質は、むしろ、そうした情報の優位性のある環境で、仕事をする中で得た経験知にあると私は考えています。そして、それをバックアップする力が組織にあるということです。

 

しかし、コンサルタントが独立すると……

 コンサルティングサービスに対して支払われるフィーは、コンサルタントに渡る分と会社の取り分に分かれます。会社の取り分が、バックオフィスやインフラを含めたコストを賄っているのは当然のことでしょう。

 

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 コンサルタントは力を付けると、かなり高い確率で、独立することを目論みます。自分一人でも仕事が回せる状態なら、組織でするよりも低い金額で高い身入りを期待できるからです。

 

 しかし、ここには、大きな罠が潜んでいます。コンサルティング会社を辞めて、猿山のボスになると、そこからどんどん知識が摩耗していくのです。もちろん、仕事の仕方によっては世の中の変化についていくことはできます。できるはずです。ところが、かなり高い確率で劣化します、不思議なことに。直接会社に秘儀が存在しなくても、コンサルティング会社という居場所が本人を再教育している、ということなんでしょうか。興味深い事象ですが、私自身、メカニズムがよくわかりません。