B☆らぼ

知っている、から、理解できた、へ。理解できた、から、できる、へ。ビジネス知識からパフォーマンスへの橋渡し

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ホワイトカラーの生産性その1 アイデアと具体的事実を行き交う

抽象的思考と具体的な現象のバランス

 抽象的なことばかり書かれている文章を読むと、実際に何について言及しているのかがわからなくなります。逆に、具体的で細かいことばかり書いている文章は、理解するのに苦しみます。

 

 ビジネスの本でも、具体例がなく、理屈ばかり書いてある本は読後ぼんやりしてしまうでしょう。記述されている内容の具体例が自分で補える人なら楽しめたとしても、曖昧さを残すことでしょう。

 

 学生がビジネスの本に感化されて、言葉を使って見せたりする意識の高さが痛々しいのは、概念をもてあそんでも中身が伴っていないからです。経験も具体的で詳細な情報もない。

 

Amazon.co.jp: やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9 (ガガガ文庫): 渡 航: 本

で、さんざん小馬鹿にされていましたが、就職活動している勘違い学生もあんな感じです。その勘違いぶりがどれだけバカに見えるかについては、このライトノベルでも読んでいただきたいところです。

 

 

 抽象的な概念は理解はたやすいが、何を表現しているかの見極めは難しい。事象の列挙は、理解が難しい。

 

たとえば、「経営者にはリーダーシップが必要である」という文は、リーダーシップという極めて抽象的な概念のせいで、何となく文の意味をとらえることができたとしても、実際にどんな情報を指しているかは理解できません、文脈なしには。しかし、逆に、経営者の行動をずらずらと並べられても、他の人にとってどんな意味があるかはわかりません。また、このことばがどの程度正しく、どの程度的外れかということも分かりません。

 

 これが、経営者にはリーダーシップが必要、という抽象的な表現の後に、経営者の行動が記述されると、具体的な行動をリーダーシップというカテゴリーで理解することができます。あるいは抽象的な意味を、具体的に何を指し示すかという情報で補うことができます。

 

抽象的な概念と具体的な情報の関係 

 具体的な情報が、抽象的なカテゴリーに分類されて、さらに一般的な理論へと編みあげられていきます。

 

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 理論、といっても、御大層な科学理論ではなく、物事の因果関係や相互関係を明らかにする理屈のことです。理論はカテゴリー(あるいはコンセプト)によって形作られています。理論が物事をうまく説明できるかどうかは、カテゴリー(あるいはコンセプト)が具体的情報とちゃんとつながっているからです。

 

 ビジネス書なんかを読んだときには、他人の理論を目にするわけです。ところが、具体的な情報が共有されているかどうかは分かりません。本を書いたときに踏まえた体験やデータが、あますところなく記載されていれば、本の記述だけでは理解できなかったことも追体験することができるかもしれません。しかし、多くの場合、ビジネス書はそんな風になっていません。もちろん、ビジネス書だけではなく、一般書籍だってそうです。一つの主張を、十分な論拠やデータを示しながらきっちりと形にするのには、紙面も必要ですし、編集者の協力も必要ですし、何よりも書き手に能力が必要です。

 

 また、ある読者にとっては十分な根拠であっても、別の読者にとっては不十分かもしれません。私自身経験がありますが、ある年齢までほとんど理解できなかった文章が、経験を踏まえたことによって俄かにリアリティを帯びたものになったことがあります。

 

解釈に十分な素地なしに概念をもてあそぶのは多分無駄

 カテゴリー(概念)を補うための具体的情報が、読者の方に生じた、ということです。本を読むだけではものにならない、とはよく言われることです。そして、単に物事を経験するだけでも、やはりものにならないのでしょう。では、どうすればいいのかと言うと、本に書かれていることと自分の体験したことについて、良く考えることです。

 

 最近、「反省」ということばが良く使われます。もちろん、自分が悪いことをしたということを反省する、という意味ではありません。物事を振り返ってじっくりと考えるということです。本に書かれてあることをカテゴリーや概念の関係として頭の中で解きほぐした後、自分自身の体験や具体的な情報と結び付けます。

 

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 これが解釈の過程です。他人が理論的な洞察を創り上げる過程は、あくまでも一般的な理屈を作るためのものです。しかし、そこから、豊かな解釈を引き出せるかどうかは、他人の書いたものをしっかりと読めるか、ということと、自分の体験に引き寄せて理解できるかということにかかっています。

  

 私が思うに、少なくともビジネスで物を考える時には、この二つの過程を常に反芻しています。単純な作業の生産性とは別の意味で、ホワイトカラーの生産性は、有用な知識や理屈を生み出し、解釈し、仕事を豊かに意味づけていくことだと思うのです。