B☆らぼ

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Zガンダムというブラック企業アニメ

ゼータガンダムとかいう不快なアニメ

 私は、ガンダムシリーズで、Zガンダムがトップクラスに嫌いです。通しで二回くらいしか見たことがなく、細かい部分について、記憶があやふやになっているかもしれません。そこはご了承ください。

 

 カミーユが多感だから壊れたんじゃないと私は思うのだ

 もう凄く昔のアニメなので、ネタばれをしてしまってもかまわないと考えています。で、結論について書くと、非常に優れたNT(ガンダム世界における超人)であり、パイロットとして有能なカミーユが発狂して終わります(テレビ版)。

 

 カミーユという少年は、アニメ開始早々エキセントリックな言動が目立つキャラクターであり、彼に関わる人がどんどん死んでいく中で、パイロットとして成長していきます。

 

 そして、彼が所属する組織エゥーゴのエースとして、活躍し、燃え尽きる、という形です。私が良く見かけるタイプの評価は、カミーユは純粋で多感過ぎたから壊れた、というものです。

 

エゥーゴとかいうブラックな組織

指導者が不在で、余所者に責任をなすりつける

 むろん、それを完全に否定する気はありません。しかし、それ以上に、このアニメを見ていた時にいや~な気分になったのは、エゥーゴの組織体制です。Zガンダムの世界は、肥大した地球連邦のなかに、地球生まれこそが優れた人類であると考える急進派のティターンズが生まれます。そして、それに対抗するためにできたのがエゥーゴです。

 

 ティターンズが人材の層、戦力ともに充実した組織体制を持っているのに対して、エゥーゴは組織としてボロボロです。エゥーゴには、アニメ開始初期から、クワトロという偽名を使ったシャア(ジオンの王子です)が所属しています。このクワトロという人物は、他の作品では見られないくらい伸び伸びとパイロット生活を楽しんでいるように見えます。

 

 自分自身の家のことや、国家を背負って政治をさせられるよりも、一パイロットとして活躍しているのがなんか楽しそうなのです。で、このクワトロは、重圧を背負わなくてよい立場でエゥーゴに所属しています。インターネットの掲示板を見ていると、クワトロは責任を放棄したクズという意見も見かけます。真実の一面を付いている気がしますが、もっとクズなのは、気軽にベンチャーで働こうとしたクワトロを、重職につけようとした組織の方です。本人は不本意ながらも、ダカールの名演説や面倒くさい政治の場に出向いています。最低限のことはしているわけです。

 

まともな経営陣がいない

 エゥーゴの元々の指導者であるブレックス准将は、物語途中で暗殺されています。本来的には現場を任されてしかるべきであるヘンケン艦長は、マネージャーとしての適性をほとんど感じさせない人材です。そこで、急にクワトロ(シャア)を持ち上げることとします。しかし、彼のことを考えてみると、本当に責任を背負うつもりなら、自分で組織を作ったんじゃないでしょうか。というわけで、エゥーゴの統治機構はガタガタのまま、物語の最後まで進んでしまいます。

 

 現場には、一年戦争で成果を上げ、中間管理職として有能なブライト艦長が指揮していました。しかし、彼も指導者というよりは現場監督の資質の持ち主なので、安心して見ていられる動きはするものの、リーダーとしての資質は見せません。クワトロの部下の熟練パイロットも、リーダーシップを大きく発揮するまでには及ばず、さらに、物語が進むにつれて戦死します。

 

大企業の社長秘書みたいな嫌味な女先輩

 で、残っている先輩パイロットは、ティターンズから逃げ出してきてエゥーゴに所属することになったエマですが、彼女はパイロットとしてはエリートですが、単なる優等生、薄っぺらなモラリストでしかなく、カミーユに先輩風は吹かせても頼りになる人物とは思えません。彼女のキャラクターを思い浮かべると、昔働いていた会社の役員秘書室で、何だかよくわからないけれども偉そうにしていた女性社員を思い浮かべます。誰も別に彼女のことを特別優れているとは思っていないけれども、態度はでかくて、ルールはきっちり守る、という。

 

そして、全ての負荷は天才的な手腕の若手にしわ寄せ

 ティターンズの並みいるエース級の相手と戦うには、エマではやや力不足、クワトロは不安定、というなかで、カミーユに戦力の中核が期待されます。そこに、カミーユを追いかけてきた幼馴染のファ、生意気なガキであるカツが参加します。この二人の指導をエゥーゴのメンバーがみっちり見ていた描写は思いだせず、カミーユは、二人にかなり労力を割いていたと思われます。

 

 いくら攻撃的なキャラクターとはいえ、多感な少年に人殺しの第一線で高いパフォーマンスを求める一方で、まともな人的補償もないまま、あまり戦力にならない新人をアサインしたことで、カミーユはものすごくストレスを溜め込んだことでしょう。立て続けに新型モビルスーツとエリートパイロットを送り込んでくるティターンズに対し、ボロボロの状況の中でいつ終わるとも分からない戦争を続ける――ー文字通りのデスマーチ

 

 いくら有能な即戦力の新人とは言っても、この状況では潰れるほかないでしょう。カミーユは戦争の悲劇とか、感受性が高すぎたための悲劇だけではなく、おそらく、エゥーゴというブラックなベンチャー組織のせいで潰れたのだと私は思います。そう考えると、特別な話でもなく、けっこう世の中にあふれていそうだとは思いませんか?