B☆らぼ

知っている、から、理解できた、へ。理解できた、から、できる、へ。ビジネス知識からパフォーマンスへの橋渡し

Lancers.jp

「『思考停止ワード44』(博報堂ブランドデザイン著、アスキー 新書)その9」

 相変わらず、この本に対して突っ込むわけですが、今回は「リサーチ」の項目です。書かれている内容は大して価値がないのですが、「主観」ということばの使い方が香ばしくてたまりません。

 

 私は良く知らないのですが、クリエイターの人たちは、マーケットリサーチのようなものを嫌うそうです。データや数字が想像力の足かせになる、というような反論が聞かれるのだそう。

 

 そんなことを言うクリエイターは、勘違いした「クリエイター」()なんじゃないかと疑いを濃厚にします。さて、記事によると、こうしたクリエイターの感想には、リサーチは客観的で主観を交えてはいけないもの、という先入見があるとのことです。この客観、やら、主観という概念の使い方が荒っぽくて、もう少し分析的に書けよ、と思えてしまいます。

 

 リサーチが必要か、必要でないか、というような話題ではなくて、ことばに対する勘があまりにも鈍くて、コミュニケーションがうまくいっていないだけではないかと思います。思考停止の前に、普段利用している概念の正しい定義と使用法を確認した方が良いと思います。

 

 この本で使用されている主観ということばは、むしろ、個人の感覚を元にした解釈や直観のことです。あるいは、リサーチ結果を解釈する時にも、個人の体験や知識をベースにした判断が行われます。これも「主観が入る」と表現するよりも、解釈する、と表現するべきです。

 

 だいたい、リサーチ結果が客観云々という話も、世の中のすべてのことをあらゆる手段を利用して情報収集することができないわけですから、そもそもリサーチは特定の目的、特定のスコープに対して行われます。その目的やスコープ等のリサーチの設計をする人がいるわけです。

 

 

 人の意図に基づく行動を「主観的」と表現するのが正しいのかどうか。私は、正しくないと思います。この本は、切り口以外に評価する点がない、とこれまで論じてきましたが、ことばの使い方についてもガバガバです。