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知っている、から、理解できた、へ。理解できた、から、できる、へ。ビジネス知識からパフォーマンスへの橋渡し

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従業員アンケートを考えてみる⑦

 再び、設問について考えていきましょう。以前、経営の要素のうち、ヒトと情報に関わる設問を取り扱いました。今回は、カネについて考えてみたいと思います。

 

 

 金銭とモチベーション

 

 モチベーションについて考える時、内発的なものと外発的なものがあるということを紹介しましたが、外発的なモチベーションの最たる例が金銭です。ここで、極めて原始的な人間像を想定しましょう。その人は給料をもらっているから働いています。彼女(彼)に今以上に働いてもらおうと思えば、成果に応じてボーナスを支払うことが良い、ということになります。

 

 モチベーション論で有名なものに、マズロー欲求段階説があります。これは、生存本能のような下等な欲求から、自己実現欲求のような高度な欲求へと人間の欲求はどんどん推移していくということです。つまり、抜いたら、賢者モードになって、哲学のことを考え始めるというようなことでしょうか。

 

 これは、すぐに反例が見つかりそうなものです。お金を稼ぐのは比較的物質に満たされた現代においても楽しいです。私はそうでもありませんが、貯金額が増えていくのをステータスのように語っている人も少なくありません。お金がほしい理由が、物が欲しいから、だとかお金がほしいからではなく、社会から承認されている気がするから、自分が認められた気がするから、と様々な形を取っている人は少ないはずです。同じことが、性行為についても言えます。美女・美男をパートナーにしたいのは生存本能の問題だけではなく、他人の目を気にするから、ということは考えられないでしょうか。

 

 一見、原始的に見える欲求も原始的でない欲求と結び付けることが可能かもしれません。逆に、一見高尚に見える「社会貢献」とかいうお題目の背後にも権力欲が隠れているかもしれません。

 

 このモチベーションに関する問題は、学問的にもそれほど統一された見解はないように思われます。学者は内発的モチベーションを強調しがちですが、それは彼らが、研究したいという特別な性質を持っていて、かつ、それを満たす仕事についているからです。では、別の側面として、好奇心は特別なヒトだけのものかと言われれば、もちろん違います。普通の人だって、スケベ根性・知的好奇心すれすれの欲求で週刊誌を見るはずです。

 

 アンケートを取る時には、是非、お金に関してどういう風に考えるのか、というところまで踏み込んで色々な仮説を形成していただければ、と思います。これは、施策レベルにまで調査結果を結び付ける時には特に重要になります。

 

お金の話は重要だ

 仮に、金銭的な成果を上げれば上げるほど、満足度が向上する、という結果が出たとしましょう(たぶん、ありえないですが)。その調査結果が出たとして、ボーナスを天井なしで設定できる企業があるのでしょうか。むろん、モチベーションの向上、業績の向上、ボーナスへの反映、が直線で結べるような単純な関係であれば、お金が好きでたまらない人はどんどん仕事をしてくれるでしょう。しかし、現実には、ある一人の人が死ぬほど働いたとしても、企業の収益のメカニズムの中で出せる成果は知れています。さらに、それをどこまでボーナスに反映できるかどうかはもっと限定的になりそうです。

 

 他方、金額ではなく、頑張った見返りとして評価が欲しいと考えている人ならば、マイレージのポイントのように金銭的なインセンティヴとは別に報酬を設定するだけでも抜群の効果が発揮できるかもしれません。

 

 もちろん、こんなことをすべてアンケートから知ることなど到底不可能です。ただ、知ったところでどうするかというところまで背景に考えた上で、その理論をテストすることと、漠然と(それこそマズロー欲求段階説に関する通俗的な理解程度で)アンケートをするのでは、全く意味合いが違うと思われます。

 

 

 お金に関するやりがいについては、まず、このような洞察をすることをお勧めします。